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2016 Vol.4 – MEMS and Advanced ICT Society

MEMSと高度ICT社会

MEF 2016実行委員会 副委員長 / 早稲田大学 研究戦略センター副所長・教授 小林 直人

 MEF2016開催が近づいて参りました。私はMEMSそのものというよりは光半導体デバイスや光通信ネットワークが専門ですので、ここではMEMSと急速に進歩した情報通信技術(ICT)をめぐるシステムと社会の話を中心に技術の方向性を述べたいと思います。

 

●飛躍的なICT技術の発展

「第4次産業革命」ということが最近いわれています。18世紀の蒸気機関に始まる第1次産業革命、19世紀の電気を主力とする第2次産業革命、20世紀の電子技術と自動化による第3次産業革命に続くもので、昨今のIoT(もののインターネット)、ビッグデータ、人工知能などICTの飛躍的な発展により各種の産業技術のイノベーションが起きているのが第4次産業革命という訳です。その中心的なキーワードはディジタル化、ネットワークとインテリジェンスでしょう。

経済産業省ウェブサイト) 

 

 IoTはあらゆるものがインターネットにつながってお互いに情報交換をしたり制御したりする技術です。ドイツではIndustry4.0という工場の自動化を進めている一方で、米国ではGE社が先導してIndustrial Internetという動きを進めています。このような動きの全体はCPS(Cyber Physical System、サイバーフィジカルシステム)とも言われ、実空間の制御を情報空間において行うことを指します。その中でネットワークも超高速大容量化していますが、スイッチ、ノード、光ファイバー、無線などの物理的なデバイス・装置にとらわれず通信をソフトウェアでダイナミックに制御するSDN(Software Defined Network)の技術が進展しています。これもCPSの一部と言えるかも知れません。

(NECのウェブサイト)

 

 一方で、数年前ではIBM社の人工知能(AI:Artificial Intelligence)Watsonがクイズ番組で人間を破ったり、最近ではGoogle社のAlphaGoというAIが碁の名人を破って話題になったようにAIの急速な進化には目を見張るものがあります。この背景には深層学習(Deep Learning)という機械学習によるコンピューターの知能化が大きな役割を果たしています。これらのAIは医療、金融、法務などいろいろな分野のビジネスで大きな力を発揮すると言われています。例えばAIによる車の自動運転などは現実の動きになっています。さらにAIの発達により人間の仕事のかなりの割合がなくなるという予想もされて大きな社会的反響を呼んでいます。ロボットとAI技術の融合による新たな行動知能も急速に進展することでしょう。

人工知能学会のウェブサイト

 

●新たな社会の動き

 我が国では、2016年初頭に「第5期科学技術基本計画」を決定しました。その中では「ソサイエティ5.0」ということで、まさに高度ICT技術を基盤にした、スマートな社会(超スマート社会)の実現を想定しています。サービスや事業の「システム化」、「システムの高度化」、「複数のシステム間の連携協調」が重要で、そのための共通的なプラットフォーム(超スマート社会サービスプラットフォーム)を作り上げることが目標になっています。

内閣府のウェブサイト

 

 またそのプラットフォームに必要となる技術(サイバーセキュリティ、IoTシステム構築、ビッグデータ解析、AI、デバイスなど)と、新たな価値創出のコアとなる強みを有する技術(ロボット、センサー、バイオテクノロジー、素材・ナノテクノロジー、光・量子など)について、中長期的視野から高い達成目標を設定し、その強化を図るとしています。ここではMEMSの活躍が大いに期待されています。

 またIoTについても国や産業界の様々なプロジェクトやビジネスの動きがありますし、AIでは、産業技術総合研究所、理化学研究所などに人工知能研究センターを作って統合的な研究開発を行うことをしています。このようにAIやさらにはロボットの技術を利用して30兆円の市場まで増やすことも期待されています。

産総研人工知能研究センターのウェブサイト

 

●センサーネットワークの新たな動向

 このような高度ICT社会では、MEMSをベースにした多量の高機能低価格のセンサーやアクチュエーターが必要なことは言うまでもありません。そしてそれらはセンサーネットワークとして高密度なネットワークと繋がって使われます。2023年までに年間一兆個という大量のセンサーを使う社会を作ろうという米国発の「トリリオンセンサー」(世界中で一人あたり150個ものセンサーが必要)というプロジェクトも進んでいます。

(Janusz Bryzek氏資料)

 

 ここで使われるセンサーには気象・大気・水質・土壌・海洋などの環境データ、工場・事業所・オフィス・店舗などの製造・サービス産業のデータ、道路・駅・車・列車・空港などの交通データ、病院・介護施設・保育園・家庭などの医療健康データ、学校・図書館・メディアなどの知識基盤データ、発電所・電力系統・再生エネルギー供給などのエネルギー・データ、地域・自治体・店舗・商業施設などの生活データなど多種多様なデータが取得可能となるでしょう。

 一例として、東京女子医大で現在進行中のMedicine4.0というプロジェクトが大変興味深いものがあります。このプロジェクトでは病院の手術室の中の機器や装置を全てネットワークで繋ぎ、「SCOT(Smart Cyber Operating Theater)」と呼ばれる次世代手術システムを作り上げつつあります。手術室内の医療機器をネットワークで接続し、各機器の稼働状態や医療スタッフの動きなどをリアルタイムに解析して、この結果を手術ナビゲーションなどに反映することで、現場の「意思決定を自律的に支援する」システムです。熟練医の経験や技量に頼るのではなく、科学的根拠やデータベース、エレクトロニクスやメカニクスを駆使して個々の患者に対して最適な治療を実現するとされています。このようなスマート手術室では様々なセンサーが使われています。まさにMEMSに取っても多くの出番があると思われます。

東京女子医大先端工学外科学分野のウェブサイト

 

●ネットワークの最近の動向

 巨大な数のセンサーやアクチュエータをネットワークに繋ぐセンサーネットワークの、技術の方向性として、①エッジコンピューティング、②ディジタルコヒーレント光通信技術、そして③光通信・無線の融合などが、重要な技術と考えられます。エッジコンピューティング・ネットワークでは遠くのクラウド・サーバーまでわざわざデータを送らずに、ローカルに情報の制御や処理をします。これにより遅延を少なくしネットワークの負荷を減らすことができます。また端末の負荷も軽減でき、センサーデータなど膨大なビッグデータ処理には適しており、全体としてネットワークの低消費電力化をすることもできます。

 一方、ディジタルコヒーレント光通信技術とは光通信が有する位相、分散や偏光などの制御が困難な種々のアナログ特性制御をDSP(Digital Signal Processing)で全てディジタル信号として実時間処理してしまう手法です。これによって位相や偏光などの光の特性を有効に多量に使うことができ一本のファイバーチャネルを通る信号の超高速大容量化に道が開かれています。

 さらに、光通信ネットワークとともに重要な無線通信は次世代技術の開発が進んでいます。無線通信は1970年代より30年をかけて数10kbpsの狭帯域から数100Mbpsの広帯域へと進化してきていますが、2020年以降は10Gbpsを超える第5世代の超高速大容量移動通信の実現が予想されています。それに向けた通信の課題はコヒーレント技術を適用した光・無線融合型次世代ネットワークが鍵となります。そこではセンサーネットワークやモバイルネットワーク等、様々なワイヤレスネットワークとそれを収容する光通信ネットワークとを融合し、レジリエントで安全なアクセスネットワークを作り上げることが極めて重要です。これにより、光や無線によるアクセスを意識することなく、様々なネットワーク資源を柔軟に活用することが可能となると予想されています。

東北大学・中沢正隆先生インタビュー

 

●おわりに

 今後のMEMSシステム技術に取って重要なことの一つは「階層システム化」であると考えられます。ネットワークにあらゆるものが繋がるIoTの世界では、個々のセンサー等のデバイスを利用した全体としてのシステム化を考えなければいけないのですが、末端のデバイスをいきなりクラウドに繋げるのではなく、デバイスレベル、ノードレベル、エッジレベル、クラウドレベルでのシステム設計が必要です。その階層化されたシステムの中で個々のMEMSデバイスの機能と仕様の設計が必要となります。

 一方、MEMS技術の技術開発には大学や公的機関における先進的基礎的な研究成果を早く有効に製品に繋げる産学連携が必要であるともに市場需要に的確に結びつける努力が必要です。そのためには大学・研究機関にあっても企業にあっても研究開発の当初から明確なユーザーを想定するとともに、ビジネスでの想定ユーザーとの対話を欠かさないことが重要でしょう。

 以上、述べたようにICTの急速な進歩により世界は今大きく変わろうとしています。そのなかでMEMSシステム技術は大きな役割を果たすことは確実です。MEF2016がそのような重要な節目の技術のあるべき方向性について有益な議論がなされる場となることを期待しています。

 

 

 

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